不動産競売の入札参考資料! 「現況調査報告書」って何?
株式会社レフォルマ代表取締役 伊藤 [2006.3.29]
競売のいわゆる「三点セット」と呼ばれる一連の資料のなかで、前回は競売入札の要となる「物件明細書」について語ってみました。
今回は、競売になってしまった物件の「今」が書かれている「現況調査報告書」についてお話しましょう。
まず「現況調査報告書」とは何か? という初歩の初歩からお答えしますと、これはある不動産に対して競売決定がなされると裁判官は執行官に対して現況調査命令を下し、報告書の作成を求めます。このレポートを「現況調査報告書」と言います。
分かり易く言えば、裁判官が執行官に「ちょっと競売差押を受けた不動産があるのだけど、この物件が一体どんな状況にあるのか。見た目はどうで、なかにいる人間やら状態はどのようになっているのか、判断しないといけないのだけどこっちは裁判所から出られないから、オマエちょっと見てこい」といったことを命令文で出すのですね。執行官は現況調査も仕事のうちですから、その命令を受けたら「了解しました」とばかりに動くという寸法です。
ちなみに執行官というのは、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法における事務を取り扱う役人で、不動産や船舶における現況調査の他に強制執行や差押を行います。「執行官法」によれば、執行官の収入は公務員的な立場にありながらも、執行官に仕事を依頼した時に発生する手数料収入でまかなうという自営業者的側面もあります。ただし、年間一定額以上の手数料収入がない場合、国庫から補助金が出るという待遇を受けています。収入に関して言えば、半官半民のいいとこ取りをしていますね。
現況調査命令を受けた執行官は、実際に現地に赴いて占有者と会ったり、実地を見たりして、今現在、その不動産がどのような状況にあるのかを調査します。
もし仮に不在であっても、もしくは居留守を使ったとしても執行官は鍵業者と立会人である公務員を連れていき、鍵業者に解錠させ、公務員立ち会いの下、室内に強制的に立ち入ります。室内の状況を実際に見て、報告書に添付する写真撮影を行うためです。
裁判所からの命令といった強い権限を持っているからそのような強制的な行為が出来るのだと言えますが、しかし中には現況調査命令を受けたのにも関わらず、室内の写真が撮れないどころか、裁判所命令を受け、鍵業者も立会人も引き連れているのに中に入れない場合があります。
例えば、その建物や敷地内が日本国外である場合。これは占有者が外国の大使館やそれに準じる施設であるケースです。債務を支払えなくなった所有者が持っている不動産を賃貸に出していて、それを大使館が借りている際に起こりうるパターンです。治外法権を主張されると流石に入り込めません。
その他のケースとしては、社会的弱者と呼ばれるような人が病気や怪我で寝ていたりとか家人の懇願によりその部屋の扉やふすまが開けられないこともありますが、それであっても全く立ち入りがなされないことはありません。ですが社会的に強面の人間が占有している場合においては、執行官もその威圧的な態度に及び腰になって、一歩たりとも中に入ることが叶わず、室内の写真撮影や立ち入りを諦めることがあります。
執行官は職務において場合によっては警察の協力を得ることも可能であるのだから、そういった場合においても毅然とした態度で臨めばいいと思いますが……。
従いまして、「現況調査報告書」を読む際にはきちんと室内の写真があるかどうかもチェックしてみれば、占有者がどのようなタイプの人間かおおよその見当はつくでしょう。外観の写真はあるのだけれども、室内の写真が一枚もない、ということはすなわち執行官の強制力をもってしても室内に入れなかったということですから。
また「現況調査報告書」には関係者の陳述を記載した項があります。これは占有者や所有者、近隣住民といった執行官が話を聞いた人の陳述要旨が記載されています。ただここで注意しなければならないのは、これは「あくまでも要旨であり、話のすべてではない」ということです。話し方ひとつとってみても、相手はもの凄く威圧的脅迫的に話をしていたとしても、その陳述にあるのは、とても丁寧な言葉で書かれていたりするからです。
また「自分ひとりで住んでいます」という陳述があったとしても、それはあくまでも「本人が話した」ことであり、実際の状況とは異なっていたりすることも無論あります。
それに一番気をつけなければならない点は、「現況調査報告書」は今の状況を記したレポートであることには間違いないのですが、この「今」というのは、あくまでも調査時点での「今」であり、三点セットが公開される期間入札が始まる数週間前の「今」の状況が描かれているという訳ではありません。少なくとも調査時点から数えて、数ヶ月から半年程度のブランクがあります。
このブランクの間に、占有状況が変わっていたりするのはままあることです。
競売妨害の手段として古典的なものは、例えば「現況調査報告書」作成時には更地であったのに、開札間際になると建物が造築されているということがあります。
こういった競売の落札対象にならない件外建物によってその土地の入札価格を引き下げようとしたり、占有者の関係者以外に落札されたらされたで、買受人から法外な立ち退き料をせしめようとするといったパターンです。
いずれにせよ「現況調査報告書」は競売に入札するにあたって必須の資料であることは間違いないのですが、しっかりと読み込み、それと同時に実際の現地をきちんと見てくるということが必要ですね。
次回、三点セットのうち、最後の資料「評価書」について語りましょう。
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